近年、不動産の売買取引で、「仲介手数料が最大で無料になる」というサービスを行う業者が増えています。
消費者にとっては魅力的に感じる話ですが、デメリット(欠点)は無いのだろうかと心配になる面もありますよね。
そこで、売買仲介営業職と建売住宅の仕入業務の両方を経験したプロに、公平な目線で見たデメリットを聞いてみました。
この記事を読めば、売買取引における仲介手数料無料の会社について、どのように考えれば良いのかが理解できると思います。
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普通の不動産会社の言い分
仲介手数料が無料になるのですから、支払金額の上ではメリットしかありませんよね。
問題となるのは、支払が少ない代わりに、どんなサービスが受けられなくなるのかです。
この問題については、仲介手数料を満額で受領している不動産会社の仕事内容と比較すればいいわけですよね?
もっと分かり易く言えば、普通の不動産仲介会社等が顧客に対して説明する「仲介手数料無料の会社の欠点」に着目すれば良いという事です。
「やめたほうがいいですよ」等と潰しにくる理由に着目して検証するわけです。
よく言われる潰し文句には、以下のようなものがあるそうです。
一つずつ検証してもらいましたので、詳細は後述しておきます。
【検証1】
- 銀行の金利優遇が受けられない
- 他の名目でお金をとられる
- 特定の保険等に加入させられる
【検証2】
- 当社を通さないと買えない
- 値引き率が違う
- 書類作成の質が悪い
【検証3】
- 営業マンのやる気がない
- 責任を果たさない
- 怪しい業者が多い
デメリットの検証 その1
銀行については、不動産業者を通すことで優遇されるわけではありません。
銀行は、あなたの年収や職業が安定していると思えば、優遇金利を出しますので、この潰し文句は苦し紛れの嘘だそうです。
仲介手数料が無料になる代わりに、事務手数料とか広告料等と称してお金を取る業者がいる等と言う営業マンもいるようです。
業法違反になる話なので、実際にはそんな業者はいませんし、いたとしたらすぐに潰れますよね。
火災保険等を特定の会社で加入することを条件にされるケースについては、全く無いとは言えないそうです。
しかし、基本的に加入先の選別は自由ですので、条件にされても断ればOKです。
普通の不動産会社でも火災保険の代理店になって勧誘を行っていますので、同じことだそうです。
デメリットの検証 その2
「当社を通さないと買えない物件です」等と言って他業者へ行かれるのを阻止しようとする営業マンには要注意だそうです。
このような営業マンに騙されないようにするために、宅建業法で取引種別(取引態様)を表示する決まりになっているそうです。
販売図面に『媒介』(一般媒介)又は『仲介』と記載されている物件は、どこの不動産業者でも取り扱いのできる物件という意味です。
営業マンが売主にひそかに連絡をし、「うちの客なので、他社から申し込みが入ったら断ってください」等と根回ししていることもあるそうですので注意しましょう。
物件の値引きについても、同様に「うちで買うことで大幅値引きが受けられる」等と言う営業マンがいるそうです。
実際、よく客付けをしている仲介業者は、値引きを受けてもらいやすいこともあるそうです。
しかし、基本的には売主が「どれだけ売りたいか」によって決まる面が大きい為、あまり気にしなくて良いとのことでした。
むしろ、仲介手数料が無料である事の方が、メリットが大きいでしょう。
一方、「書類作成の精度が悪く、安心した取引ができない」という説は、一概に間違っているとも言えないそうです。
大手不動産会社では、法務課等での書類チェックが行われますので、一般的な不動産会社よりも精度が高いことは確かだそうです。
しかし、契約書類は銀行もチェックするので、住宅ローンを使う場合には心配いらないとのことでした。
それに、仲介手数料無料の会社でも宅地建物取引士を持っている担当者が重要事項説明を行います。
いい加減な仕事をするわけではありませんので、仲介業務の経験が浅い営業マンでない限りは問題ないとのことでした。
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デメリットの検証 その3
仲介手数料が無料なので、営業マンのモチベーションが低くなる可能性があることは否定できません。
しかし、宅建業者又は取引士である以上は、罰則や業務停止処分等になるような仕事はできませんよね。
それに、自分達で仲介手数料を無料にすると言っているのですから、それでやる気がないというのもおかしな話です。
これについては、利用者の感想等を参考にするしかない部分ですが、業界人の目線から見てもあまり気にする必要はないとのことでした。
要するに、やる気の無い営業マンはどこにでもいるのだそうです。
また、漠然とした批判ではありますが、「怪しい業者が多いですよ」等と不安を煽るケースもあるようです。
曖昧な表現ではあるものの、こう言われて不安にならない人はいませんよね。
確かに、仲介手数料を無料にする業者は、小さな不動産屋であることが多いです。
大手に対抗するために利益を削っているので、規模が小さくないとできないとも言えます。
店舗費用や人件費をかけないようにしているから仲介手数料が無料にできるという側面もあります。
ですから、これを「怪しい業者」と言うのは乱暴すぎますよね。
正確には、「小さい会社が多い」という事だそうで、これが取引に影響するわけではありません。
要するに、契約時の環境等が立派な応接室等ではないというだけの事ですね。
売主からの排除
仲介手数料無料の会社とは、取引をしないという売主がいるそうですので、これについて少し深く理由を聞いてきました。
これには、業界の複雑な事情が絡んでいます。
仲介手数料を満額で受領したいと考える仲介業者にとって、仲介手数料無料の不動産会社は邪魔な存在です。
自分達と同じサービスを半額でやられてしまっては、さすがに集客に影響するからです。
このような背景から、今まで客付けをしてあげた売主に対して、「あいつらに売らせないでくださいよ」と言ってくる業者が出てきました。
これは、仲介手数料無料の波が死活問題になっている証拠でもあります。
売主側としては、商品を売ってくれればどんな業者でも良いわけですが、力のある不動産仲介会社に対しては気を遣うケースもあるのだそうです。
売主の会社が小さい建築業者等の場合、地元の不動産業者とベッタリという場合もあるからです。
このような建築会社では、仲介手数料無料の会社に対して取引を断るケースもあるようです。
大きな建築会社の場合、年間棟数は数千単位になりますから、仲介業者に気を遣う必要性は低くなります。
仕入情報を得る都合等で、多少気を遣うことがある程度だそうです。
この為、大手建築会社の物件の場合、仲介手数料無料の不動産業者でも分け隔てなく紹介してもらえる可能性が高いそうです。
消費者にとっても、大きな建築会社が建てた物件の方が安心ですから、小さな建築会社に排除されることがあったとしても、その影響は小さいと考えて良さそうです。
本当のデメリット
一般的にデメリットとして挙げられていることの大半は、気にする必要のないものばかりでした。
そこで、業界経験者に、仲介手数料無料の不動産会社を利用する際の「本当のデメリット」とは何かを聞いてみました。
すると、以下のような部分が本当のデメリットではないかと教えてくれたのです。
- サポート体制の弱さ
- 必ず無料になるわけではない点
- 案内予約がとれない
- 自分で動く部分が増える
デメリットの解説
担当者の経験が浅い場合、大きな会社ならばベテラン社員や法務課のサポートがあります。
小さな不動産屋の場合、このような体制がありませんから、担当者の経験値には注意した方が良いそうです。
仲介手数料についても、「最大で無料」等としていて、実際には割引されるだけという場合もありますので、これもデメリットの一つに挙げていました。
しかし、建売住宅の場合は、全て無料にするという業者もいるので、この場合にはデメリットにはならないそうです。
仲介手数料無料の会社の存在が知られてきた為、顧客の問い合わせが増加しています。
対応しきれない状況になっている会社もある為、物件案内等の予約がなかなかとれないといった不便さが起こる可能性があるそうです。
その結果、自分で動く部分が増える可能性があります。
通常は不動産屋が橋渡しをしてくれる住宅ローンの審査等も、自分で銀行に行って進めていく必要があるかもしれません。
この辺りは確かにデメリットと言えそうですよね。
しかし、逆を返せば「自分の努力で節約できる部分」とも考えられますから、人によってはメリットに感じるのかもしれません。
こんな不動産会社に注意!
仲介手数料が無料になるとアピールする不動産業者が増えてくると、この選別にも迷うところですよね。
専門家にこの選別方法についても聞いてきましたので、参考にしてください。
私が教えてもらったのは、ホームページから判断する方法です。
仲介手数料無料の会社は、ホームページで判断するしかない状況であることが多いので、会社のホームページ内容をよく読むと良いそうです。
具体的には、曖昧な表現で説明している業者は避けた方が良いとのことでした。
どんな場合に仲介手数料が無料になるのかや、キャッシュバックが発生するのはどんな条件下の場合か等、明確に理解できない表現をしている業者は危険だということです。
このような業者は、景品法や業法で規制されている不当な表示をしている可能性もあります。
そもそも、顧客に正確に物事を伝える能力が無いという事ですから、選ばない方が良いですよね。
なんだかよく分からないけれど、メリットが大きそうな事を書いている、という業者は避けましょう。
公正取引員会に見つかれば、処罰の対象になるでしょうし、法律の守れない会社に依頼すべきではありませんよね。
「明確さ」と「誠実さ」を感じられる会社を選ぶのがコツだそうです。
オトリではなく、きちんと明確に無料を約束している会社を選びましょう。
まとめ
きちんと仕事をしてくれるのであれば、仲介手数料は無料になった方が良いに決まっています。
ですから、良い会社(担当者)を見つける事ができれば、大金を節約する効果があります。
節約額が3ケタの数字になることもありますから、まずは探してみることだと思います。
SNS等で良い情報が広まり易い時代ですから、不動産業界も変化したということではないでしょうか。
これからの時代、仲介手数料は「無料なのが基本」になっていくのかもしれませんね。