2020年1月8日の朝(日本時間)、イランがアメリカ軍とイラクの共同軍事施設に対してミサイル攻撃を行いました。
イランから発射されたミサイルは、2カ所の軍事施設に対して行われたと報道されています。
ここからの最善のシナリオと、最悪のシナリオについて、両面から見通しをまとめたいと思います。
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イランとアメリカの衝突経緯
イランとアメリカが、ここまで緊張が高まる事態となった原因について、簡単にまとめておきます。
2018年5月8日 アメリカが核合意離脱を表明
2019年6月20日 イランが米軍のドローンを撃墜
2019年9月14日 サウジの石油施設に攻撃(イラン政府暗躍と推定)
2019年12月27日 キルクークのイラク軍基地が攻撃される
2019年12月31日 イランのソレイマニ司令官が殺害される
最善のシナリオ
軍事的な報復攻撃が行われた以上、何も良い事はありませんが、それでも株式市場や経済に対して最善のシナリオを想定することはできます。
この後で開かれるトランプ大統領による演説によって、アメリカ兵の犠牲者が最小限となったことが明らかになり、アメリカからの対抗措置が軍事以外による手段であることが最善のシナリオとなると思われます。
アメリカ側は、当然にイランによる報復攻撃を想定していました。
この為、事前に警告的なメッセージも出しています。
内容的には、「即時に戦争を終わらせる用意がある」等、という脅しに近いようなものです。
アメリカの国益に被害を与えれば、直ちに対応すると言っていたことから、トランプ大統領が何もしないという事はあり得ないでしょう。
今回の攻撃対象は、イラクとアメリカの共同軍事施設という事でしたので、この点をどう捉えるかが焦点になると思われます。
アメリカ側が「イラクの施設に対する攻撃にアメリカ軍が巻き込まれた」と考えるのか、それとも「アメリカ軍の施設に対する直接的攻撃であった」と捉えた措置をするのかでシナリオが大きく変わってきそうです。
上昇シナリオ
最も望ましいのは、イラクへの攻撃にアメリカが巻き込まれた為、経済的報復措置をとるという解決策が出ることです。
イランからの更なる報復行動を警戒するムードは変わらないものの、ひとまず最悪の事態は免れそうだという安心感が広がるシナリオです。
株式市場は、長期的な上昇チャートを形成し始めたところでしたし、このところ外国人投資家は大幅な買い越しをしていました。
今回の株式下落幅では、この持ち高を投げたという域までは達していないでしょう。
市場が嫌気するニュースを不感症的に無視する底堅さを見せ始め、徐々にムードが改善していくというのがベストな流れなのではないでしょうか。
最悪のシナリオ
当然ながら、最悪のシナリオは戦争の勃発です。
最悪のシナリオは、トランプ大統領が強行的な対抗措置に出る事です。
人的被害が思ったよりも大きく、アメリカ国民からも反イラン感情が高まる流れです。
トランプ大統領的には、選挙対策としても報復をすることがプラスになるような状況下では、もはや戦争は避けられないと言って良いのではないでしょうか。
そして、攻撃を行ってきたイラン側の軍事施設等をターゲットにした報復攻撃を直ちに行うシナリオは、急激にマーケット心理を冷やすでしょう。
また、イランもこれに黙っているわけがありませんので、すぐさま次の攻撃が行われます。
すると、もはや戦争状態は避けられない状況となり、各国から両者に対する態度が示されます。
中国・ロシアは、自制を促しながらもアメリカ側に責任があると主張し、ヨーロッパ諸国は中立的な立場をとるのではないかと思われます。
最悪なのは、中国又はロシアが軍を動かし始めた時です。
この動きを世界が察知した時、マーケットは「第三次世界大戦」を想定せざるを得ません。
実際にどうなるかは別として、織り込みにいく動きが出るという事です。
戦争の規模によっては、開戦後に急上昇することもあると思いますが、長期戦になれば原油高や為替にとってマイナス要因です。
イランとアメリカのその後
以降、1月8日のミサイル攻撃以降のうごきについてまとめていきます。
1月8日 午後
お昼を過ぎ、イランが第二の攻撃を開始し、攻撃された施設では死傷者が20名を超えているとの一部報道がありました。
この報道を受けて下げるかと思われましたが、イラン外相によって「戦争は望んでいない」というメッセージで安心感が広がった模様です。
死傷者数について、何らかの発表制限がかかっている可能性もあります。
13時過ぎのニュースでは、現時点では死傷者の情報は無いと言われ始めました。
現段階でアメリカ人兵士の報じられると、動揺が広がる可能性が高い為、一部で出た情報を制限する動きがでたのかもしれません。
日本時間で今晩、トランプ大統領が声明すると発言しており、ひとまずこれを待つ格好となっています。
軍事行動をとる事、もしくは既に指示した事を発表した場合、再び株価は下落することになりそうです。
トランプ大統領の声明内容
2020年1月8日の夜(日本時間)に行われるトランプ大統領の「イランの攻撃に対する表明」は、予想されていた中で最善の内容でした。
米軍の死者は無く、施設への被害もそれほど大きくなかったと公表し、「イランに対して軍事力は使いたくない」と表明しました。
イランもアメリカ側に書簡を出しており、反撃をしなければこれ以上の手出しをしないことを意思表示してきていたようです。
トランプ大統領は、今回のイランの行為に対して、軍事力ではなく経済的制裁等によって対処する意向を示しました。
これによって、NY市場は上昇し、為替も円安に振れています。
市場では、これ以上両国の抗争が悪化することはなさそうだと見ているようです。
まとめ
新しい情報が入り次第、また追記式でまとめていきたいと思いますが、マーケット関係者としては、まずはトランプ大統領の反応を見極めたいという向きが大半を占めていました。
結果的には、最も良い選択をした形となり、両国の関係は平行線のまま、争いが避けられました。
今後も、最善のシナリオで戦争にならない事を祈るばかりですね。