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相続税と贈与税の税率を一体化する自民党案

自民党で検討することが決まったと報じられた、相続税と贈与税の統合案については、今後も注目が集まるところです。

資産家の方々は勿論の事、既に暦年贈与での対策を行っている人にとっても衝撃の改正案となることは間違いありません。

相続税に合わせるのか、贈与税に合わせるのかによっても、皆さんの将来資産に大きな影響を与える問題ですよね。

この記事では、改正に向かう背景や、その実現性等についてまとめてみました。

 

税統合の背景

自民党は、相続税で課税されるはずだった資産を前もって贈与(暦年贈与)するのは公平ではないと主張しているようです。

公平性の観点から税率を統一すべきだ!と言うわけですが、だったら最初からそうしていれば良かった話でもあります。

 

現在の税率では、1年に110万円までは非課税で贈与できることになっています。

また、贈与税は、310万円までは10%(内、110万円以下は非課税)510万円までは15%で贈与ができます。

 

仮に、将来の相続税が20%以上となる事が確実な人の場合、長い年月をかけて毎年贈与をしていく方が得なケースも多かったわけです。

 

長い間、日本ではこのような暦年贈与を許してきたわけですが、これは日本の相続税が世界的に見ても高いことへの配慮だったように思います。

事実、ヨーロッパ等では、消費税が高い代わりに、相続税はとても低いという国が目立つのです。

 

しかし、ここにきて、「生前贈与と相続後の移転を比べた場合、資産移転の公平性が無いので、一体化したらどうか」という話を本気で検討し始めているのです。

 

体裁としては、このような公平性を掲げていますが、実のところは財政的に「金持ちからお金を集めるしかない」という状況なのではないでしょうか。

 

コロナウイルスによる給付金や、その他の対策費用が膨大に膨らみ、消費税を増税した効果を帳消しにする状況となっています。

企業経営も悪化している会社が増えていますし、更に消費税を上げるという事もできません。

 

そこで目を付けたのが「相続財産からの徴収」というのが、実際のところではないでしょうか。

今後、相続をする度に、国民は大きな税出費を余儀なくされる時代になるかもしれませんね。

 

相続税と贈与税のどちらに合わせる?

そもそも、相続税と贈与税を比較すると、贈与税の方が税率が高いです。

これは、贈与税が『相続税を補うための税金』という意味があるからです。

 

もっと分かりやすく言うと、「将来、きちんと相続税を払うなら贈与税はかけないよ」という税制度なのです。

相続の発生前に動かしたお金については、相続の申告時にしっかりとチェックをして、相続税の補完をさせるわけです。

 

税務署は、1年間に110万円を超える贈与を行っている証拠を掴んだら、お金を受けとった人に贈与税をかけ、相続税を逃れた分を取り戻せるようにしている仕組みです。

 

そう考えると、2つの税金が一体化される場合、どちらに合わせるかは明白ですよね。

相続税に合わせて、全ての資産移動に相続税と同率の税金をかけてくるでしょう。

 

しかし、これには「どうやって監視するのか」という問題もあり、AIとマイナンバー制度等を活用したシステムが不可欠に思えます。

現金で受け渡された場合や、複数の口座から少額ずつ動かされた場合等、全ての資金移動のチェックは容易ではないでしょう。

 

この為、一体化が決まったとしても、当分の間は今までと同様に『続時に過去の資金移動をチェックする』という体制が続く可能性が高いと思います。

では、そのような税改正が行われた場合、具体的にどんな影響がでるのか計算してみましょう。

 

相続税と贈与税が統合されたら

仮に、1千万円の現金資産を贈与した場合で考えてみます。

現行の贈与税で見れば、10年かけて暦年贈与をすれば非課税で贈与できることになりますが、相続税と一体化した場合、一律に10%の相続税が課税されます。

 

子供等に1千万円を贈与するには、100万円の税金を納めなければならないという事です。

しかし、考え方によっては改正メリットがあると考えられるケースもありそうです。

 

贈与税の場合、10%で受け渡せるのは、110万円~310万円です。(110万円までは非課税)

つまり、現行では、10%で贈与するには、1年に310万円までとなっています。

 

1千万円以上の資産を税率10%で受け渡すには、4年以上の期間がかかるのが現状です。

 

もし、あなたが「10%であれば、1度にたくさん渡しておきたい」という資産状況である場合、相続税に一体化してもらった方が良いと思いますよね?

何故なら、相続税に統一(一体化)された場合、1千万円までは10%で渡せるからです。

 

しかも、1回で渡すことができるのですから、手間も少なくて済みます。

10%はとられるものの、暦年贈与で9~10年かかるところを、1日で贈与を終わらせることができます。

 

このように、相続対策の時間が無い人にとっては、良い税改正とも考えられます。

贈与契約書等も必要ありませんし、資産家にとっては好都合な面もあるわけです。

 

おそらく、贈与額を通算で計算されることになる為、1千万円以上を渡してしまうと税率が高くなっていくというデメリットはあるものの、相続税の場合、通算5千万円までは税率が20%を超える事がありません

 

一般的に、1名に対する贈与額が5千万円以上になるケースはそれほど多くはないので、思ったよりも影響が少ないのかもしれませんね。

今後は、「とりあえず1千万円までは渡しておこう」という選択をする人が増えそうです。

 

総資産によって損得が分かれる

総資産が大きい人(数十億円等)の場合、相続税との一体化はマイナス面が多いです。

暦年贈与を長く積み重ね、非課税枠の恩恵を最大に活かすという対策がとれなくなれば、今後の子孫への受け渡しロスが増大していくでしょう。

 

数千万円分の資産が非課税で受け渡されてきたことを考えれば、確かに公平性が無かったのですが、「今更ですか」という突っ込みも入れたくなる改正です。

 

今後、これに10%~20%程度の税金が統一して課されるようになれば、皆さんの資産が10~20%減る改正であるとも言えます。

 

一方で、総資産が少ない人の場合、事前に10%を払って子供達に現金資産を移すことによって、将来の相続税が無くなるケースも確実に出てきます。

 

一体化によってまとまった贈与ができるようになると、瞬間的に基礎控除内に収めることが出来る効果もあります。

この為、この税改正では『人によって損得が分かれる』という事になりそうです。

 

まとめ

相続税と贈与税の一体化は、かなり現実的なものなのではないかと思っています。

コロナウイルスによって税収減に困っている事情を考えると、法人税や消費税を増税することは難しいでしょう。

金持ちから徴収する税改正は、国民の理解も得やすい為、すんなり改正案が通る可能性が高いのではないでしょうか。

数年後には、相続税対策の常識が変わり、1千万円単位の贈与が主流になっていくのかもしれません。

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