実のなる植物や、花が咲く植物の花粉は「受粉」の意味やイメージがしやすいですよね。
でも、樹木の花粉は何のためにあるのか、不思議に思った事はありませんか?
また、杉のような花粉を大量に飛ばす樹木は、自然界でどのように増えたのか等、花粉と関係した疑問についてまとめてみました。
知得情報として、読んでみてください。
樹木花粉の役割
杉や松のような裸子植物は、種子植物のなかで種になる部分(胚珠)が露出しています。
裸子植物は、種子を作るようになった最初の植物であると言われていますので、かなり古い種であることが想像できますよね。
「杉に種なんてあったっけ?」と感じる人が多いと思いますが、ちゃんと存在しているのです。
花粉は、受粉のために飛ぶものです。
そして、受粉は種をつくるために必要な交配の意味がありますよね。
杉は雌雄同株なので、その木の雄花と雌花で受粉することもありますが、他の木の花粉と交配することで種族の多様性を高める自然の機能があるということです。
一般的な花は、虫などに花粉を運ばせる機能を持っていますが、裸子植物の場合は、雄花の花粉を風に乗せるので、環境に囚われない優れた交配方法を持っているとも言えます。
このように、風に花粉を運ばせて雌花に受粉させるものを風媒花と呼びます。
花粉症の人達を苦しめている様々な風媒花は、出会いを求めて旅していたわけですね。
樹木花粉の役割は、種をつくるための交配だということです。
杉はどうやって増えるのか
杉のような裸子植物が自然界で広がる原因は、種が小動物等に付着して運ばれることが考えられます。
光が射しこまない状態では、発芽しても大きく成長できない為、太陽光の当たる場所へ運ばれた種が時間をかけて成長し、その周辺に同様の杉を生み出すという広がり方をします。
人間による植林の場合には、挿し木による増やし方と、種から苗をつくる(実生苗)方法があります。
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挿し木苗による植林
挿し木苗のメリットは、あらかじめ良い遺伝子を持った樹木を選別できることです。
特に、資材目的としての植林の場合には、良質な木材となる可能性の高い親木を選ぶことによって、将来に同品質の木材を大量に得ることができます。
その反面で、全てが同じ遺伝子を持つことによるリスクもあります。
人間で言えば、挿し木苗による植林は、クローンで人口を増やすようなものですよね。
最悪の場合、同一の病気等によって一度に全滅する可能性があるということです。
そう考えると、風媒花の受粉活動の重要性がより理解できるのではないでしょうか。
実生苗による植林
実生苗は、簡単に言えば種から育てる苗です。
ですから、手間とコストがかかることが想像できますよね。
それに、種から育てたからといって不良品種でないとは限りません。
品質が判断できるようになるまでには、30年以上の期間が必要ですから、使い物にならない場合には大損害になるリスクがあります。
それに、様々な遺伝子を持つ苗が入り混じる為、成長にもばらつきが出てきます。
これは、安定した品質が確保しにくいということでもあるので、資材管理としての観点ではハイリスクな面があります。
その反面で、遺伝子的には多様性があるので、一つの要因(病気等)で全滅するといった可能性が低くなります。
このような事情から、実生苗と挿し木苗の選択については、地域によって判断が分かれます。
気候的な都合や、林業地の伝統等によって、その場所に合った植林が行われているという事ですね。
杉を減らせない理由とは?
スギやヒノキの花粉については、人間社会にとっては弊害ばかりですよね。
車も汚れますし、洗濯物等も干しにくくなります。
鼻炎の薬、マスク、目薬等の購入にも出費がかさみます。
花粉関連商品の消費による経済効果としては、役に立っているとも言えるのかもしれません。
でも、多く人からすれば、『杉を減らしてほしい』というのが本音ではないでしょうか。
実際、杉の木は、当初の予定よりも消費量が伸びなかった為、植林されたままで放置されている過剰な状態なのです。
それでも減らせない理由としては、以下のような事情があるからです。
需要の問題
スギやヒノキが過剰に増えた理由は、戦後の植林事業によるものです。
しかし、数十年の間に木材価格が下がり、林業における採算性はかなり低下しました。
植林した木材が安値でしか売れず、伐採等にも人件費等のコストがかかりますので、結果的に放置されている状態です。
行政としては、公共施設等に国産木材を使用することを推奨する他、新築住宅に国産木材を使うと補助金が出るようにするといった工夫で需要を刺激してはいます。
先行コストがかかっているので、木を切るには「買い手」を増やすことが必要なわけです。
オリンピックの競技場等でも木材使用の設計が採用されているのは、このような流れも影響していそうです。
災害と温暖化
スギ林には、土砂崩れのような災害対策としての意味もあると考えられています。
また、他の樹木よりも二酸化炭素の吸収量が多く、地球温暖化防止の役割としても大きなものがあるのです。
スギの二酸化炭素吸収力はヒノキやクヌギ等と比べてもかなり優れているそうです。
国としては、このような環境面での観点からもスギを無計画に切り倒すわけにはいかないわけです。
それに、山林の所有者はそれぞれ異なりますから、伐採しようとしても、承諾をとるのが難しいケースも多いはずです。
国としては、花粉の少ないスギや広葉樹への植え替えを進め、山林の所有者に補助金を支給するくらいしか手が無いのが現実なのです。
まとめ
針葉樹(風媒花)による花粉の謎が解けてスッキリしましたか?
「温暖化を抑制する」という目的については、杉ではない植物でも役割を担える部分がありますから、少しずつ植え替えが進むと良いですね。
私達の子孫は、もう少し花粉症に苦しまない環境で暮らせるかもしれません。
花粉症についても、結局は人間の手による「植え過ぎ」が招いた産物と言えそうです。
本来の自然が持つ、バランスのよい森形成に戻っていくといいですね。