芸能人が不祥事を起こして逮捕された時などには、「勾留」・「執行猶予」・「保釈金」等といった法律用語をニュースで耳にしますよね。
これらの意味がよくわからない人も多いと思いますので、できるだけ簡単にご紹介していきたいと思います。
一通り読めば、ニュースの意味がよく分かるようになると思いますよ。
勾留(拘置)とは?
勾留とは,逮捕された被疑者等が逃亡するとか、証拠隠蔽等ができないようにするための措置です。
刑事施設に留置して身柄を拘束することを言い、勾留自体は刑罰ではありません。
予備的な措置の段階だと思えば良いと思います。
法律ではなく、新聞用語での表現としては、勾留のことを「拘置」と表現することもあるようです。
ですから、私達がニュース等で目にする「勾留」と「拘置」は、全く同じ意味ということです。
ちょっと紛らわしい話ですが、法律上では「拘留」という言葉も存在します。
読みは同じなのですが、こちらはもっと重い意味があります。
拘留は,刑罰の一種になるので、1日以上30日未満の一定期間、刑務所や拘置所,または警察が管理する留置場等に収監されます。
勾留の流れ
刑法上で、逃亡や証拠隠滅のおそれのある被疑者に対しては、たとえ判決が下される前であっても身柄を拘束(勾留)すべきと考えられています。
逮捕されたら、最大48時間以内に検察官へ送致する手続きを行います。
更に、そこから24時間以内に検察官は、被疑者を引続き身体拘束(勾留)するのか、釈放するのかを判断をすることになります。
検察官が引続き被疑者を勾留すると決めた場合,検察官は裁判官に対して「勾留請求」を行い、これが認められた場合、10日間の勾留が可能となります。
検察官は、勾留延長請求を行い、これが認められれば、更に10日間まで勾留を延長できます。
話をまとめると、逮捕後に勾留されると、最大で23日間の身柄拘束をされる可能性があるということです。
書類送検
被疑者を逮捕せず、適宜被疑者を呼び出して取調べをするような場合には、「書類送検」という言葉が使われます。
勾留はしませんが、必要に応じて何度か警察署へ出向き、取調べを受けることになるケースで使われます。
捜査が行われている間、被疑者はそれまでと同じように社会生活を送ります。
警察は、取調べの結果などを書類にまとめて検察庁に送る手続を行い、それ以降は検察官が主体となって取調べ等の捜査を行います。
保釈金って何?
皆さんは、「無罪推定の原則」をご存知でしょうか。
刑罰は、有罪判決があって初めて実行されるものであって、それより前に刑罰を課すことはできないという原則のことです。
逮捕や勾留は、そもそも刑罰ではありません。
罪証隠滅や逃亡の可能性を考えた措置ですから、制限を課すにも限界があります。
刑事手続のためとはいっても、逮捕や勾留されることで自由を奪われますし、職業によっては大きな損害を受けることもあります。
逮捕や勾留されたために職場を辞めざるを得なくなる人も多く、今後の生活に致命的な事柄になる可能性もあります。
この為、被告人を一旦釈放できる余地を残した制度として、保釈があると考えれば理解しやすいと思います。
保釈は、起訴された被告人に対して認められる制度で、一定要件を満たすことで認められます。
裁判所が保釈を認めた場合には、保釈保証金の額が決められます。
この保釈保証金は、「犯罪の性質及び情状、証拠の証明力並びに被告人の性格及び資産を考慮して、被告人の出頭を保証するに足りる相当な金額」とされています。
要するに、その人の財力や資産から、これを捨てて逃げる可能性が低い金額を設定するということです。
ですから、お金持ちである程、保釈金が高くなるということです。
いずれの場合の保釈においても、裁判所からの出頭命令には必ず応じることが条件にされます。
保釈中の逃亡、証拠隠滅等をした場合には、保釈は取り消され、保証金の一部または全額が没収されます。
保釈中の違反がなく、裁判手続きも終了した時には、裁判の結果にかかわらず保証金は返還されます。
起訴されるってどうゆうこと?
起訴とは,検察官が特定の刑事事件について裁判所の審判を求めることです。
起訴の権限は、原則として検察官のみが持っています。(起訴独占主義)
検察官に起訴されるということは、捜査段階から裁判手続に移ることを意味します。
被疑者は、同時に被告人という立場になるわけです。
検察官が裁判所の審判を求める必要がないと判断すれば、不起訴となります。
不起訴の理由は、「嫌疑なし」・「嫌疑不十分」・「起訴猶予」の3種類に分類されます。
「嫌疑なし」の場合、疑いが晴れたということになります。
執行猶予って何?
ここからは、ニュース等でよく耳にする執行猶予の意味を説明します。
要するに、執行猶予は「刑の執行を猶予すること」ですが、少しだけ掘り下げて説明しておきたいと思います。
起訴されたことで裁判所の審判が開始され、刑事裁判の被告人に判決があったとします。
しかし、深く反省していれば実刑にしなくても良いかもしれない・・というような微妙なケースもありますよね。
執行猶予は、このような場合に対応するためにできた制度だと思えば良いと思います。
つまり、「一定の期間(執行猶予期間)の中で他の刑事事件を起こさないなら、判決の執行を猶予してあげるよ」という制度です。
(有罪判決にもとづく刑の執行を一定期間猶予し、その期間内に再度罪を犯さないことを条件として、刑罰権を消滅させる制度)
執行猶予で与えられた条件をクリアすると、判決の効力が消滅することになりますから、事実上「なんとか許してもらえた」ということになるわけです。
因みに、執行期間中に再び罪を犯してしまうと、その罪の刑罰と執行を猶予されていた分の罪の刑罰を合わせて科せられます。
このような制度上、実際に刑事裁判にかけられて犯行自体を認めている場合、執行猶予付き判決を得て、実刑を免れることができるかどうかが関心事になるわけです。
どんな判決にも執行猶予を付すことができるわけではありませんが、これが話題になっているということは、執行猶予の余地があるということだと思えば良いでしょう。
保護観察
執行猶予とセットで実施される「保護観察」という言葉もよく耳にしますよね。
執行猶予の対象者を社会生活下で更生させるために、保護観察官と保護司が罪を犯した人を指導する制度です。
初めて執行猶予付き判決を受けるときでも、特に再犯防止の必要性が大きく、更生を援助しなければならないような場合には、裁判所の裁量で保護観察に付すことができるようになっています。
まとめ
一通り、起訴から執行猶予までの意味やイメージができたのではないでしょうか。
まずは、逮捕や勾留があったときに大きなニュースが流れますよね。
起訴後には、執行猶予がつくのか、それとも実刑判決となるのかが注目されます。
この間、保釈金で一度勾留から解放される等の動きが出ることも多いです。
今後、ニュースを見る際の理解度がUPしたのではないでしょうか。