ハリガネムシの一生(生態)には、とても重要な意味があります。
ハリガネムシは、カマキリに寄生している虫としても有名ですよね。
ハリガネムシは気持ちが悪いですし、毛嫌いされて当然なのですが、実は自然界には欠かせないサイクルを生み出しています。
この記事では、そんなハリガネムシの不思議な生態と、自然界での役割についてご紹介したいと思います。
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ハリガネムシの生態
ハリガネムシは、その名の通りに針金のような細長い水中生物です。
オスとメスが川の中等で繁殖(交尾)し、糸くず状の卵を産みます。
その後、極小のミミズのような幼虫になり、川底などに生息します。
そして、アカムシや水生昆虫等に捕食され、その体内へと移って休眠状態となります。
このアカムシ等の昆虫が成虫になって飛ぶようになると、他の大型昆虫等に捕食される個体が出ます。
カマキリやバッタ類等、色々な虫に捕食され、その寄生先を移していきます。
不思議な事に、ハリガネムシは、カマキリ等の大きな昆虫に寄生すると休眠をやめて活動を始めます。
ハリガネムシの一生(サイクル)
カマキリ、バッタ、コオロギ等に寄生先を移したハリガネムシは、その体内で少しずつ成長していきます。
そして、最終的には宿主の脳に特殊なたんぱく質を注入し、水中に行くようにコントロールします。
人間に当てはめて考えると恐ろしい状態ですよね。
無性に体が熱くて水に入りたくなるとか、喉が渇いてしかたない状態にさせるような感じかもしれません。
事実、寄生されたカマキリは、自ら溺死するような行動をとり、水の中へと体を委ねるのです。
水中に入ると、ハリガネムシはカマキリ等の昆虫から外に出て、交配する相手を探し始めます。
こうして、ハリガネムシの一生が最初のサイクル(振り出し)に戻るのです。
考えてみれば、このような生態はとても非効率です。
何故なら、カマキリ等の宿主が鳥や魚等に捕食されれば、ハリガネムシも同時に命が絶たれる結果になりますし、そもそもが水中生物なのですから、水中でそのまま成長する方が効率が良く、外敵に捕食されるリスクも小さいはずです。
それなのに、わざわざ寄生の道を選んでいる辺りが不思議だと思いませんか?
ハリガネムシの存在意義
生命の営みは、誰かが創造主となって生み出したのではないかと思うくらい不思議でよく出来た仕組みになっています。
ハリガネムシもその1つで、とても重要な役割を果たしているんです。
それは、カマキリ等の大型昆虫を魚達に運ぶ役割です。
魚が食べているのは、主に小さな水中昆虫です。
カマキリ等のように大きな栄養源の捕食は、魚達の命を繋ぐために重要な意味を持ちます。
魚達がまとまった餌を捕食できるのも、ハリガネムシのお陰だったわけです。
もしかすると、様々な昆虫がカマキリと同様の理由で水の中へと誘導されているのかもしれませんね。
このように、ハリガネムシは意図せず魚達の餌になる役割を果たし、地上昆虫を介して再び水中に戻るサイクルを生み出していたのです。
大袈裟に言えば、生態系を回転させる潤滑油のような存在だったわけです。
とても不思議で面白い生態ですよね。
アナサキス(海の場合)
陸・川でのサイクルを生み出すハリガネムシに対し、海ではアナサキスの存在があります。
まだまだ未解明な部分があるそうですが、彼等もまた重要な役割を果たしているのだと思います。
アナサキスの場合、海中で発生した後にオキアミ等に寄生して休眠化します。
オキアミを捕食する多くの魚(鯖・イカ・サンマ・カツオ・イワシ等)に移った後も、休眠を続けていることが分かってきました。
アナサキスは、更に大型な生物に移った後で活動を活発化します。
その代表格がクジラやイルカ達です。
クジラやイルカの消化管で活動を始め、彼等の糞に混じって海へと戻るサイクルを繰り返しています。
ここからは私の想像ですが、アナサキスには、オキアミや魚の栄養素を向上させる働きがあるのではないかと推察しています。
寄生生物には、宿主に良い影響を与えているものも多いです。
アレルギーを抑制している等、何らかの抵抗力を付与しているといった事が起こります。
正しい寄生先ではない体に入ると、腹痛を起こしたりといった害が生じますが、クジラやイルカに入ったアナサキスは、彼等に死んでもらっては困るので、居心地の良い場所として共存しようと働くのです。
まとめ
たかがハリガネムシと侮るなかれ・・・実は、なかなか深い生命サイクルを感じさせる昆虫でした。
この地球上には、そもそも、不要な生物など一匹たりともいないのでしょう。
一見して役に立っていないような生物もいますし、似たような特性を持つ昆虫等もたくさんいますよね。
でも、他の生物が絶滅した時のためのスペアとして存在している昆虫や生物もいるのでしょうから、やはりどれも大切な種なのです。
特別なワクチン等を開発するための要素を隠し持っている生物もいるでしょう。
地球上の生き物の絶滅数が増える度に、地球上の生物寿命もまた縮まっている気がしてなりません。
たった1種類の生物が消えることによって、他の生物の大量発生や絶滅に繋がり、作物の不作や災害等に繋がることもあり得ます。
世界の学校教育で、このような視点で学ばせ、理科や生物学の本当の意味を伝えることが大切なのではないかと思います。